「医療用麻薬」には,モルヒネ,オキシコドン,フェンタニルなどがあります。痛みをやわらげる効果が強く,がんに伴う痛みを取り除くために,有効な薬剤です。一方で,主な副作用には,吐き気,便秘,眠気があり,どれも適切な対応方法があります。 1. 吐き気 必ず生じるわけではありませんが,医療用麻薬の開始時・増量時に生じやすい副作用のひとつです。多くの場合,1〜2週間程度でからだが慣れてくると,自然に改善します。からだが慣れるまで,吐き気止めを定期的にまたはそのつど頓用とんようで使用します。食事は消化の良いものにする,部屋の空気を入れ替えるなどの工夫も有効な場合があります。吐き気がいつどのようなときに出るかを担当医や看護師,薬剤師に伝えてください。 2. 便秘 医療用麻薬を定期的に使用している患者さんの約80%が経験します。下剤を上手に使うことで対応できます。下剤には,便をやわらかくする薬,腸の動きを改善する薬,そのほか(医療用麻薬による便秘を改善する薬などの新しい下剤)がありますので,状態にあわせて薬が選択されます。食事内容の工夫や適度な運動が有効な場合もあります。排便回数,便の性状を担当医に伝えてください。 3. 眠気 必ず生じるわけではありませんが,医療用麻薬を始めるときや増やすときに生じることのある副作用のひとつです。1〜2週間程度でからだが慣れてくると自然に改善することもあります。ここちよい眠気の場合は少し様子をみてもよいでしょう。痛みがない場合には痛み止めの量を減らしたり,眠気が生じにくいほかの痛み止めに替えることもあります。使用前に比べ明らかに強い眠気(食べたり飲んだりできなくなる,呼びかけても反応が悪くなる)の場合は,担当医に相談してください。痛み止め以外が原因(脱水,電解質の異常,脳の病変など)の可能性もあるので,いつからどのような変化があったかを担当医に伝えてください。 「麻薬中毒」とは,痛みがないにもかかわらず,薬を使わずにはいられなくなるような状態のことで,「精神依存」ともいいます。痛みの治療目的で医師が処方した薬をきちんと使用する場合は,依存症状はほとんど生じないことが研究で示されていますので,心配はいりません。 医療用麻薬を使うことで,がん治療に悪い影響を及ぼすことも,寿命が縮まることもけっしてありません。むしろ痛みが緩和されることで食欲が出て眠れるようになり,QOL(生活の質)が改善し,がん治療に良い影響をもたらすといわれています。 ■第4章■ 痛みのマネジメント (鎮痛薬については、2013年9月時点での情報を一部追加記入しています) VI.痛みの診断(アセスメント) 効果的な痛みのマネジメントの前提は、次の手順による痛みの診断である。
VII.鎮痛薬の役割と使用法の基本原則 適切な鎮痛薬を適切な量と適切な投与間隔で用いると、がん患者の痛みの大多数は消失し、痛みのない状態を維持することができる。 1.持続性の痛みに対する鎮痛薬使用にあたり守るべき5つの基本原則
1.鎮痛薬の選択基準(図4-1、表4-1)
2.非オピオイド鎮痛薬 非オピオイド鎮痛薬とは、一群の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアセトアミノフェンである。
表4-1 WHO方式がん疼痛治療法の鎮痛薬リスト (WHO 1996)
3.軽度から中等度の痛み用オピオイド鎮痛薬(弱オピオイド鎮痛薬)
1)モルヒネの製剤 a.速放性経口用製剤2)モルヒネ経口投与法 ・推奨経口投与開始1日量は30~60mg/日。3)モルヒネの非経口投与法 ・直腸内投与: 5.オキシコドン(麻薬) 1)オキシコドンの製剤 a.速放性オキシコドン製剤(オキノーム®散):2)オキシコドンの経口投与法 3)オキシコドンの注射投与
6.フェンタニル(麻薬指定薬) 1)フェンタニル貼付剤の種類と承認条件 2)フェンタニル貼付剤の使用法 3)フェンタニル貼付剤使用時の注意点 4)フェンタニル注射剤(フェンタニル注射液®、フェンタニル「ヤンセン」®) 7.メサドン(麻薬) 8.ブプレノルフィン(非麻薬) 9.ペチジン(麻薬) ・合成アゴニストで、鎮痛効力はモルヒネの1/8。その反復投与は、筋の攣縮、ミオクローヌス、痙攣などの中枢性副作用のため推奨されていない。10.アゴニスト・アンタゴニスト ・ペンタゾシン(錠、注射用製剤、非麻薬)などがあるが、アメリカ疼痛学会等は、副作用の点から反復投与を避けるよう勧告している。11.その他のオピオイド鎮痛薬 ・モルヒネやペチジンとアトロピンなどとの配合注射剤、ブトルファノール、その他があるが、急性痛に用いられており、がんの痛みへの使用は推奨されていない。12.オピオイド鎮痛薬の鎮痛作用以外の薬理作用の出現予防策
13.オピオイド・ローテーション ・あるオピオイド鎮痛薬の鎮痛作用以外の薬理作用の出現が、適切な予防策によっても制御しにくいとき、他のオピオイドに切り替えると解決することがある。このような目的の切り替えをオピオイド・ローテーションまたはオピオイド・スウィッチングと呼ぶ。がんの痛みに対して日本で可能なオピオイド・ローテーションは、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル3者間の切り替えである。14.オピオイドの反復投与が不要になったとき(中止方法) ・モルヒネの長期投与を安全に中止する方法(漸減法)が確立されており、他のオピオイドの場合にも応用しうる。 IX.鎮痛補助薬(adjuvant drugs) 鎮痛補助薬とは、痛みのマネジメントにおいて次の目的で使われる薬の総称である。 ・痛みに伴う精神的症状の解消1.痛みに伴う精神的症状に用いる薬 ・強い不安にはジアゼパム、ロラゼパム、アルプラゾラム、クロルプロマジン、ヒドロキシジンなど。2.鎮痛薬の副作用の防止に用いる薬 ・制吐薬、緩下薬など(表4-3)。3.特殊な痛みの治療に用いる薬
2)骨転移痛 3)脊髄圧迫や頭蓋内圧亢進による痛み(運動麻痺を伴う神経障害性の痛みの場合も) 4)消化管の疝痛X.薬以外の痛み治療法 薬以外の治療法の多くには次の特徴があり、専門的訓練・専門的設備を必要とするものが多い。 ・除痛率は高いが、無効例もある。 オキシコドン モルヒネの何倍?*オキシコドン注の添付文書においては「モルヒネ注射剤の持続投与を本剤に変更する場合には、モルヒネ注射剤1日投与量の1.25倍量を1日投与量の目安とすることが望ましい」との表記がありますが、当院ではオキシコドン注10mg=モルヒネ注10mgの1:1換算を基本と致します。
モルヒネを使う時はどんな時?がんによる様々な痛みで通常の痛み止め(主に消炎鎮痛薬)が無効、あるいは効果不十分な場合、世界標準的な鎮痛薬としてモルヒネが推奨されています。 医学的適応があれば、がんの病状の進行具合にかかわらず、躊躇(ちゅうちょ)なくモルヒネで痛みを最小に抑え、より良い生活の維持を目標にします。
オキシコドン 何に使う?このお薬には、痛みをおさえる強力な作用があります。 とくに持続する鈍痛に効果が高く、一般的な鎮痛薬が効きにくい各種のがんの痛みに有効です。 初めから使うのではなく、他の鎮痛薬で十分な効果が得られないがん性疼痛に限り用います。
オキシコンチンの副作用は?主な副作用として、眠気、便秘、吐き気、嘔吐、食欲不振、めまい、かゆみ、傾眠、発疹、蕁麻疹などが報告されています。 このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
|